改正相続法と相続税制 ~配偶者居住権とは~

Posted on 09/01/2019 by Koji Takahashi

昨年7月に相続に関する民法の抜本的な改正があり、来年7月までに施行されます。

1.相続法(民法)の改正

この改正は、配偶者保護の方策、預貯金の仮払などの遺産分割に関する見直しをはじめ、遺言制度、遺留分制度など相続法全般にわたる大改正となっています。具体的には、配偶者居住権の創設、持戻し免除の意思表示推定(配偶者保護)、遺産分割前の預貯金債権行使、自筆証書遺言の方式緩和、見直された遺留分減殺請求、特別の寄与料請求権などの項目があります。

2.相続税制とのかかわり

相続税制は、民法に基づく相続を原因とするものなので、この改正による、税務への影響は多大で、相続財産評価、相続税額の算定等につき再確認が必要ですが、今回は「配偶者居住権」について述べます。

3.配偶者居住権

被相続人が死亡した場合、新民法では被相続人の財産であった建物に居住していた配偶者は、遺言や遺産分割によって「配偶者居住権」を取得することができます。この権利はその建物の全部につき、無償で居住したり賃貸したりすることができます。今までのようにいわゆる自宅の所有権を取得するケースと比較すれば、配偶者が取得する財産はその評価額が小さくなることから、配偶者は他の相続財産をその分相続できる可能性が生じます。その存続期間は原則配偶者が死亡する時までですが、遺言や遺産分割協議で別の定めをした場合はその期間までとなります。

4.配偶者短期居住権

新民法によれば、配偶者が「配偶者居住権」を取得した場合を除いて、被相続人の相続財産であった建物に無償で居住していた配偶者には「配偶者短期居住権」があります。その存続期間は各々の区分に応じその定める日までですが、少なくとも被相続人の死亡後半年間は居住建物に無償で居住することができます。