中小企業の事業承継税制の行方
Posted on 22/11/2013 by Koji Takahashi
09年度の税制改正で、非上場株式についても相続税・贈与税の場面で農地の納税猶予に似た納税猶予制度が設けられました。しかし、制度発足後3年経過した現在でも約500件程しか適用事例はありません。そこで、今年度の税制改正でこの制度を利用しやすくしました。
1.本制度と目的
この制度は、現経営者が後継者の方へ株式(自社株)を譲渡等する際に、もともと所有していえる株式を含めて発行済議決権株式総数の3分の2に達するまでの株式について納税が猶予(贈与税は100%部分、相続税は80%部分)される制度です。また、この制度の目的は、中小企業の事業承継の円滑化を図り、企業を継続させることにより雇用維持を守ることとされています。
2.要件の改正点
①事前確認の廃止
経済産業大臣に対する事前確認は不要となりました。
②親族外の承継
この制度で、親族外(例えば社員)の中から後継者を選ぶことが可能となりました。
③雇用維持要件の緩和
5年間毎年、従前の雇用の80%を維持しなければならなかったものが、5年平均で80%へと緩和されました。
④利子税の負担の軽減
5年超にわたり事業承継していれば5年間分の利子税が免除になります。また、利子税が2.1%から0.9%に下がります。
⑤事業再生の際の救済措置
一定の事業再生の場合も、納税猶予額の一部が免除されることになります。
⑥役員の退任要件の緩和
代表者を退任すれば、その他の役員として残ることが可能となります。
⑦債務控除の取扱いの変更
経営者の債務・葬式費用は自社株以外の相続財産から控除できることになり現行よりも納税猶予額が多くなります。
3.適用時期
上記のうち①については2013年4月から、その他は2015年1月からの適用となります。なお、②④⑤⑥は既適用者にも適用が可能となります。