紙手形の廃止、そして進むデジタル化
令和4年11月2日、「約束手形」などを取り扱う全国179か所の手形交換所が業務を終了しました。手形交換所は、金融機関が受け取った手形を持ち寄り、交換する場であり、明治時代に初めて設立されて以来、現代にいたるまで、日本の経済を「縁の下の力持ち」として支えてきました。しかしながら、金融取引の電子化が進んだことから、その役目を終えました。
①手形が歩んできた歴史
手形はすでに江戸時代に商習慣となっており、明治に入って制度化されて、渋沢栄一らによって1879年12月に16の銀行が参加した大阪手形交換所が最初に創設され、以後手形法制の整備に伴って、東京でも1880年に創設されました。
手形は現金取引と比較し、支払いまでの支払猶予期間が長く、資金繰りの負担が現金等と比べて軽く、そのため、とくに企業の急成長に対して銀行の融資が追い付かない状況であった、戦後の高度経済成長期に重用されました。その後もバブル経済下で手形取引は拡大し、とくに1990年度の企業が所有する支払手形の残高は107兆円となりピークに達しました。
しかしながら、その後は資金調達の手段が多様化し、金融取引のデジタル化が進んだことなどにより減少の一途をたどってきました。
②手形の行く末、進むデジタル化
経済産業省は現在、企業間の支払いに使う紙の約束手形について、2026年をめどにやめようと産業界に呼び掛けています。紙の手形の発行には印紙代がかかり銀行振り込みに比べて煩雑です。また、現金化に時間がかかり、支払いを受ける中小企業の資金繰りを圧迫する恐れがあると、有識者会議が検討してきました。
今後は現金振り込みや電子手形への移行を求めています。全国銀行協会は電子手形の使い勝手の改善に取り組むなどしています。法人、個人ともに速やかな移行が求められます。