事業所得と業務に係る雑所得の区分
1.事業所得と雑所得の区分
事業所得と業務に係る雑所得については、その所得を得るための活動の規模によって判定され、その活動が事業的規模である場合には事業所得に、事業的規模でない場合には業務に係る雑所得に区分されることになりますが、サラリーマンのいわゆる副業やシェアリングエコノミーなど、その区分が問題となることも増えています。
2.所得税法上の定義
所得税法で、「事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。」とされています。
また、「雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。」とされています。
3.社会通念による判定
その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかについて、最高裁の昭和56年4月24日の判決では「事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」としています。
4.通達改正
令和4年10月7日に所得税法基本通達の「35-2(業務に係る雑所得の例示)」が改正され、事業所得として認められるかどうかの判定の考え方として、次の(注)が追加されています。
事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。
なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する。
5.帳簿要件
この改正では、その所得に係る取引を帳簿書類に記録し、かつ、記録した帳簿書類を保存している場合には、その所得を得る活動について、一般的に営利性、継続性、企画遂行性を有し、社会通念での判定において、事業所得に区分される場合が多いと考えられるとしていますが、帳簿書類を保存している場合であっても、次のような場合には、事業と認められるかどうかを個別に判断するとしています。
①所得の収入金額が僅少と認められる場合
②その所得を得る活動に営利性が認められない場合
また、その所得を得るための活動が、収入金額300万円を超えるような規模で行っている場合には、帳簿書類の保存がない事実のみで、所得区分を判定しないで、事業所得と認められる事実がある場合には、事業所得と取り扱うこととしています。