給与所得か事業所得か

Posted on 12/12/2019 by Koji Takahashi

雇用的自営業等(調理人、保険代理人、システムコンサルタント、建設等従業者)と総称される者の人数が200万人近くに増加しています。自分の会社の従業員でないこれらの者への支払対価が給与所得にあたるのか事業所得なのかの判断は実務上悩ましいものです。

1.問題の所在

どちらの所得にあたるかで、源泉徴収事務と消費税の仕入税額控除の処理が、変わることになるので厄介です。

2.所得区分の原則

所得税法上給与所得は「俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得」と規定され、事業所得は「農業、漁業、製造業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得」と規定されています。

3.昭和56年最高裁判決

この判決では、両所得の区分検討に当たっては、① 自己の計算と危険、② 空間的、時間的な拘束、 ③ 非独立的、従属的労働の対価、 の3つで判断していますが、実務上の判断では次の5つの着眼点があります。

4.五大着眼点

① 代替性があるか ~ 他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうかの着眼点です。代替性が無ければ、給与所得の該当性が大です。

② 拘束性があるか ~ 支払者から作業時間を指定されたり、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束を受けるかどうかの着眼点です。時間的な拘束があれば、給与所得の該当性大です。

③ 指揮監督があるか ~ 支払者からの指揮監督(業務上当然に存在するものは除く)を受けるかどうかの着眼点です。指揮監督を具体的に受けていれば、給与所得の該当性大です。

④ 報酬請求権があるか ~ 請負契約か雇用契約かの着眼点です。

⑤ 材料又は用具等が供与されているか ~ 業務に必要な材料、用具等が供与されているかどうかの着眼点です。これらを自己で準備していれば、事業所得の該当性大です。