貸倒損失の処理

Posted on 12/03/2014 by Koji Takahashi

1.貸倒損失

法人税法において、貸倒損失が発生した場合には、その発生した日の属する事業年度の損金となりますが、何をもって貸倒れと認識するかが問題となります。ここでは、貸倒損失について確認していくことにします。

2.法的な債権の消滅

次のような法律上の債権切捨て等の事実があった場合には、その切り捨てられる金額は、その事実が生じた事業年度の損金の額に算入されます。

① 会社更生法、金融機関等の更生手続の特例等に関する法律、会社法、民事再生法の規定による切捨て

② 法令の規定による整理手続によらない債権者集会の協議決定及び行政機関や金融機関などのあっせんによる協議で、合理的な基準による切捨て

③ 債務者の債権超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができない場合に、その債務者に対して、書面で明らかにした債務免除

3.貸倒処理をしていない場合

法的な債権の消滅の場合には、全額が回収不能の場合や売掛債権の特例と異なり、法人が損金経理していなくても、損金算入されることになります。

したがって、法人が損金経理していない場合には、別表四において「貸倒損失認定損」として減算処理することになります。

4.全額が回収不能の場合

債務者の資産状況、支払能力等からみて、その全額が回収できないことが明らかになった場合は、その明らかになった事業年度において、貸倒損失として損金経理をすることができます。

ただし、担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ、認められません。

また、保証債務については、現実に履行した後でなければ、貸倒損失とすることはできません。

5.売掛債権の特例

法人の営業活動から生じた売掛金や未収請負金などの売掛債権について、その全額が回収不能であるかどうかが明確でない場合でも、次に該当する場合には、その売掛債権の額から備忘価額(1円)を控除した残額を貸倒損失として損金経理することができます。

この特例は、貸付金などは対象となりませんし、下記①の取引の停止は、継続的な取引を前提としていますので、例えば、不動産取引のようにたまたま取引を行った債務者に対して有する売掛債権については適用されません。

① 継続的な取引を行っていた債務者の資産状況、支払能力等が悪化したため、その債務者との取引を停止した場合で、その取引停止の時と最後の弁済の時などのうち最も遅い時から1年以上経過したとき。

ただし、その売掛債権について担保物のある場合は適用できません。

②同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が取立費用より少なく、支払いを催促しても弁済がないとき。