養子縁組のメリット・デメリット

Posted on 05/09/2017 by Koji Takahashi

平成29年1月末日に、相続税の節税目的の孫との養子縁組が有効かどうかの注目すべき判断が下されました。節税上のメリットはあるものの、他の面で、慎重な決断が求められます。

1.税のメリット

相続税の計算では、基礎控除額の計算式、生命保険金や死亡退職金の非課税限度額、相続税の総額の計算などで、法定相続人の数が関係してきます。但し、法定相続人の中に養子がいる場合は、実子がいるケースでは1人まで、実子がいないケースでは2人まで法定相続人の数に含めることができます。

一方、相続税の計算では「2割加算」という制度があります。すなわち、被相続人の一親等の血族と配偶者以外の者の相続税額は100分の20に相当する金額が加算されます。

2.養子縁組のデメリット

第1に養子縁組で相続人が増加したことで、遺産分割協議がスムーズにいかないおそれがあります。第2に普通養子縁組では、実の親からと養親の双方から相続財産を受ける権利が生ずるのと裏腹に、双方への扶養義務も果たさなければなりません。第3に養子縁組の取り消しの問題です。養子縁組後に養親と養子の関係悪化により縁組を解消しようとしても原則お互いの合意がないと簡単にはできません。

3.最高裁判所の今回の判断

「相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得るものである。したがって、専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について民法802条1項にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない」との判決を下し、養子縁組を有効としています。但し、相続税の不当減少が認められるケースでは、養子の数を相続人の数に算入しないことも有り得るとされていますので、留意が必要です。