貸倒損失を考える

Posted on 20/12/2016 by Koji Takahashi

現状の経済情勢のもとでも不良債権の存在は、法人経営の場合も個人経営の場合でも、事業を行っていく上で頭を悩ませる問題です。

今回は、法人税通達を参考にしつつ貸倒損失について考えてみたいと思います。

1.考え方・根拠規定

会社が抱えている不良債権が貸倒損失として損金の額に算入できるかどうかの判定は、すべて個別事例となります。さらにその根拠規定は、法人税法の所得金額を計算する通則のなかで規定されています。具体的には「その事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るものを損金の額に算入する。」と示しており、いかにも抽象的表現に留まっています。

2.通達の位置付けと考え方

もともと通達は、国税庁長官が職員に示した行政上の指令でしかありません。貸倒損失に該当する事実を国税庁の立場から例示していますが、あくまで法律ではありません。しかし、納税者にとっては、大いに参考にすべき例示とはなります。

よって具体的には、国税庁による貸倒損失の事実を確認するものとして次のような取扱いがあります。① 法律的な債権の消滅によるもの、② 全額回収不能が明らかな場合、③ 取引停止後一定期間弁済がない場合、などです。

3.全額回収不能の根拠と考え方

もともと貸付金や売掛金のような金銭債権は、評価損が認められない資産であるとの規定があります。従って、部分的な貸倒損失は認められません。よって、貸倒損失を計上するためにはその事業年度末において、その全額が回収不能の状態になっていることが絶対的な条件となってきます。

従って、不良債権を分割払いに切り替え、その後数か月間の支払いを滞り程度の状況位では、貸倒損失の計上は難しいといえます。