役員給与の業績悪化事由による改定

Posted on 03/08/2012 by Koji Takahashi

  リーマンショック、ギリシャ問題、更にはLIBOR問題など次々と景気の改善に水をさす事象が現れ、企業をめぐる環境は一段と不透明さを増しているといえます。そのような中で、役員給与の会計期間の途中で変更を検討されている会社も多いかと思います。今回は、役員報酬の改定に関する基本的な考えを掲載しましたのでご参考にして下さい。

1.役員給与の取扱い
 役員に対する給与(退職給与、使用人兼務役員に対する使用人分給与等は除きます)のうち、次の①から③以外のものについては、損金不算入とされています。
  ① 定期同額給与
  ② 事前確定届出給与
  ③ 利益連動給与で一定のもの
 このうち、損金の額に算入することが出来る定期同額給与とは、「支給時期が1月以下の一定の期間ごとで、その支給時期における支給額が同額である給与」とされています。

2.定期同額給与の改定
 定期同額給与で、次に掲げる給与改定がされた場合において、給与改定前の各支給時期の金額が同額で、かつ、給与改定後の各支給時期の金額が同額であるものは、定期同額給与に該当するものとして、損金算入が認められます。
  ① その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3月を経過する日までにされた定
     期給与の額の改定
  ② その事業年度において、役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な
     変更その他これらに類するやむを得ない事情(臨時改定事由)によりされたその役員に係
     る改定
  ③ その事業年度において、経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由(業績
     改定事由)によりされた改定(減額改定に限ります)

3.業績悪化改定事由
 経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいいますので、法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれないとされています。

4.具体的な事由
 経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情としては、財務諸表の数値が相当程度悪化したことや倒産の危機に瀕したことだけでなく、経営状況の悪化に伴って、次のような株主、債権者、取引先等の第三者である利害関係者との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情も含まれることとされています。
  ① 株主との関係上、業績や財務諸表の悪化についての役員としての経営上の責任から役員
     給与の額を減額せざるを得ない場合。なお、同族会社のように株主が少数の者で占められ、
     かつ、役員の一部の者が株主である場合や株主と役員が親族関係にある場合には、役員
     給与の額を減額せざるを得ない客観的かつ特別の事情が求められます。
  ② 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額
     を減額せざるを得ない場合。
  ③ 業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維
     持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給
     与の額の減額が盛り込まれた場合。

 

By CPA & Tax Accountant, Koji Takahashi