国外転出時課税

Posted on 11/09/2015 by Koji Takahashi

1.制度の概要

平成27年度税制改正によって、国外転出をする場合の譲渡所得等の特例制度(国外転出時課税)が創設されました。

これは、国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなること)をする居住者が、有価証券等を有する場合又は未決済デリバティブ取引等に係る契約を締結している場合には、国外転出の時に、有価証券等の時価による譲渡又は未決済デリバティブ取引等の決済をしたものとみなして、所得税を課税する制度です。

2.特例の適用除外

この特例は、国外転出をする時に有している有価証券等並びに未決済デリバティブ取引等の金額の合計額が1億円未満である居住者には適用されません。

また、国外転出の日前10年以内に、国内に住所又は居所を有していた一定の期間の合計が5年以下である居住者についても適用はされません。

3.納税猶予

国外転出時課税の適用を受けたものが、確定申告により納付すべき所得税額のうち、適用資産に係る納税猶予分の所得税額については、国外転出の時までに納税管理人の届出をし、かつ、所得税の確定申告期限までに納税猶予分の所得税額に相当する担保を供した場合に限り、当該国外転出の日から原則として5年間、その納税は猶予されます。

4.5年間以内に帰国した場合

国外転出後5年以内に帰国等をした場合において、国外転出の時において有していた有価証券等又は未決済デリバティブ取引等で国外転出の時以後引き続き有しているもの又は決済をしていないものについては、譲渡又は決済がなかったものとすることができます。

5.納税猶予の期限の延長

納税猶予の規定の適用を受ける個人が、5年を経過する日までに、納税の猶予に係る期限の延長を受けたい旨その他の事項を記載した届出書を所轄税務署長に提出した場合には、その期限を国外転出の日から10年を経過する日までとすることができます。

6.継続適用届出書の提出

納税猶予の規定の適用を受ける個人は、国外転出の日の属する年分の所得税の確定申告期限から納税猶予が確定する日までの間の各年の12月31日において有し、又は契約を締結している適用資産について、引き続き適用を受けたい旨その他の事項を記載した届出書(継続適用届出書)を、それぞれの年の翌年3月15日までに、納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

継続適用届出書が提出期限までに納税地の所轄税務署長に提出されない場合には、当該提出期限における納税猶予分の所得税額については、提出期限の翌日から4月を経過する日が、納税猶予の期限となります。

7.適用関係

この国外転出をする場合の譲渡所得等の特例制度(国外転出時課税)は、平成27年7月1日以後に国外転出する場合について適用されます。