役員退職金が現物で支給された場合

Posted on 11/07/2016 by Koji Takahashi

会社が役員の退職に際して、本人の希望や会社の資金繰りの都合で今まで居住していた会社所有の社宅を退職金として現物で支給するケースがあります。この場合の課税上の留意点を考えてみます。

1.所得税の扱い

時価よりも低額になる社宅の譲渡が会社役員の退職に基因して行われたときは、譲渡対価と時価との差額は、経済的利益として退職金扱いとなります。

2.源泉所得税の扱い

社宅につき時価よりも低額になる譲渡が行われた場合、時価と実際に支払った対価との差額については、源泉所得税の追徴課税が行われることとなります。

3.法人税の扱い

法人税の場合でも、社宅の時価と実際に支払われた対価との差額は退職金として扱われるわけですが、特に役員退職金である場合で、仮に過大退職金と認定された金額は、損金の額に算入されません。又以前は、厳格な損金経理要件が存在していましたが、平成18年4月1日以後に開始する事業年度からはこの要件は廃止されています。

4.消費税の扱い

退職金の現金支給に代えて社宅を役員に給付することは、まさに代物弁済に該当し、よって代物弁済は消費税上の資産の譲渡等に該当します。社宅の場合は、土地価額部分と建物価額部分に分けられ、土地部分は非課税売上となりますが、建物部分は譲渡対価の額が課税売上となります。なお、建物と土地等を同一人物に同時に譲渡した場合で合理的に区分がされているときは、通常の取引価額を基礎として区分することになります。

5.裁判例

役員に対して退職金の一部として現物支給した土地の価額について、社宅として居住していた借地権の存在を否定している事例があります。

「東京地判平6.11.29、東京高判平8.3.26、最高裁平10.6.12」